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福岡高等裁判所 昭和56年(行コ)15号 判決 1982年2月24日

控訴人(原告) 江口徳義

被控訴人(被告) 別府税務署長

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対し、昭和四九年六月二五日付でなした昭和四八年分の給与所得金二七八万八、〇五七円中金八二万一、一九五円の、及び、昭和五〇年五月六日付でなした昭和四九年分の給与所得金三一八万九、八八一円中金一三万一、〇一二円の、各雑損控除をしない行政処分(更正決定)は、いずれもこれを取り消す。

3  被控訴人は控訴人に対し、右2項掲記の、昭和四八年分の給与所得金二七八万八、〇五七円中においては、新たに、金一一万八、六〇〇円の本位的租税債権並びにその付帯的租税債権、及び、昭和四九年分の給与所得金三一八万九、八八一円中においては、新たに、金二万二、〇〇〇円の本位的租税債権並びにその付帯的租税債権は、いずれも存在しないことを確認する。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠関係は、左記のほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(一)  原判決三枚目裏一一行目、同四枚目裏四行目、同七行目の各「支払つた」を「交付した」と改める。

(二)  同四枚目表五行目の次に改行して、「(三)仮に右主張が認められないとしても、控訴人が右金員を交付するについては、藤内夫婦が将来右傷害事件を理由に控訴人を脅迫するなど違法行為をしないことを条件とし、これに違反した場合には、右金員の返還を求めることができるようにこれを特定物として交付したものであるところ、右夫婦はその後控訴人を脅迫、嫌悪するに至つたのであるから、右条件違反により、右金員の所有権は何らの手段を要せずして控訴人の所有に帰したものというべきである。しかるに、右夫婦は、右金員の不法占有を継続し、これを着服横領したものである。」を加える。

(三)  控訴人は、当審において、甲第四五ないし第四八号証を提出し、被控訴人は、甲第四五、四六号証の成立は不知、同第四七、四八号証の成立は認めると述べた。

理由

一  当裁判所も、控訴人の所得税の更正処分取消請求は理由がないからこれを棄却すべく、租税債権不存在確認の訴は不適法であるからこれを却下すべきものと判断するが、その理由は、左記のほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する(なお、控訴人の当審における請求の趣旨2、3項と原判決摘示の請求の趣旨1、2項とは、その表現に相違があるけれども、実質的には同一であると認められる)。

(一)  原判決五枚目裏一二行目、同六枚目表七行目の各「支払つた」を「交付した」と改める。

(二)  同六枚目表九行目の「原告が」以下同一一行目の「証拠はなく、」までを、次のとおり改める。

「控訴人が義広の父親としての道義的責任を痛感して、見舞金や治療費等として冨久栄に支払つたものであることが認められる。控訴人は、前記金員を藤内夫婦に喝取又は横領された旨主張し、原審における控訴本人尋問の結果中には右主張に副う部分がみられなくもないが、この部分は、原審証人藤内幸治、同藤内冨久栄の各証言に比照し到底信用することができず、他に右主張の如き事実を認めるに足る証拠はない。」

二  よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高石博良 谷水央 足立昭二)

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